特派員Tomoの2010年上海万博突撃レポート

上海万博について

中国上海世界博覧会(Expo 2010 Shanghai China)は、2010年5月1日から同年10月31日まで、中国上海市で開かれ、出展参加国は万博史上最多の246を数え、世界最大規模の万博と言われています。総事業費は約3900億円(290億元)、地下鉄や空港などのインフラ整備などを含めると5兆5千億円(4千億元以上)もの資金が投入されたことになります。
万博のテーマは、「より良い都市、より良い生活」=(「城市、让生活更美好」(Better City Better Life")。万博会場は、黄浦江の両岸にまたがり、企業パビリオンが建ち並ぶ西岸の「浦西エリア」と各国のパビリオンが並ぶ東岸の「浦東エリア」に分かれ、両方を合わせると328ヘクタールにおよぶ過去最大の広さです。

いよいよ突撃レポート開始…

2010年7月20日、気温35度、本日の入場者予想は昨日に続き50万人を超えるとのこと、事前情報としてゲートが開く午前9時前は大変混雑するので避けた方が良いと聞いていたので、午前10時過ぎに着くように出かけた。ゲート周辺は大勢の人で騒然とした雰囲気であったが持ち物チェックはさほど厳しくなく30分程で入場することが出来た。

入場後すぐに、まるで天安門のような広場が現れる。おそらく混雑を回避するために造られた空間であろうが、あまりにも殺風景なため万博の華やかな雰囲気は感じられない。

しばらく歩くとパビリオン(A〜D)を循環するシャトルバスの発着駅に着く。ここがパビリオン巡りの全ての発着拠点となる。インフォメーションでパビリオンの待ち時間を聞いてみた。一番長い待ち時間は「中国国家館」の4〜5時間、入館予約券を持っていない人は並ぶことも出来ないらしい。2番人気は、「紫蚕島(かいこじま)」の愛称で知られる日本館で、待ち時間3〜4時間。以下、アメリカ館、カナダ館、オーストラリア館、それぞれ2〜3時間程度、もちろん台湾や香港も人気が高い。中でも列の最後尾が見えない程の長蛇の列を作っているパビリオンを発見、並んでいる人に尋ねてみるとサウジアラビア館のようである。その列の長さは中国国家館以上に思えた。中東や東アジアの国々は一般的に不人気であるにも関わらずサウジアラビア館に、どうして、これほどの人が集まるのか不思議である。


不人気パビリオン・ワースト5

「不人気パビリオン・ワースト5」などと不謹慎なレポートを行うことになったのは、滞在時間が短く人気パビリオンを見て廻ることが出来ないことも理由の一つではあるが、それだけではない。古代中国の思想に、森羅万象、宇宙のありとあらゆる事物をさまざまな観点から陰(マイナス)と陽(プラス)の二つに分類することができるという考え方があり、この考え方に沿って、不人気パビリオンを陰と捉え、このレポートを行うことにした。不人気パンビリオンには、ある「3つの共通点」が見られる。
その(1)中国と国境を接している。その(2)イスラム教国家である。その(3)経済的に遅れている。
パビリオンの平均待ち時間は3分、立ち止まることはなくスムーズに入館できるため、猛暑の中でも熱中症の心配はないお勧めパビリオンと言える。


▼第1位 朝鮮館

万博史上、初の出展と話題を振りまいているが、中国が開催する万博に出展しない訳にはいかないのであろう。中に入るとすぐ左側に5メートル程の主体(チュチェ)思想の模型がピョンヤンの街並みを背景に建てられ、その「塔」の前で記念写真を撮るようになっている。顔写真を表紙にした金日成と金正日の本が並べられていた。この外使用済みの記念切手と朝鮮の国旗を模った記念バッチやキーホルダーを販売している程度である。パビリオンの見学時間は10分。

▼第2位 タジキスタン(塔吉克斯坦)

旧ソビエト連邦、中央アジアに位置する。キルギスとともにイスラム過激派の根拠地とも言われている。待ち時間3分、綿花で作った絨毯を陳列、正面には国家党首らしき人物の写真が飾られているが誰だか分からない。パビリオンの見学時間は5分。

▼第3位 バングラデシュ人民共和国(孟加拉人民共和国)

バングラデシュは、南アジアにあるイスラム教徒の国である。首都はダッカ。インドの東側に位置し、インド洋に面する世界で7番目に人口が多い国である。待ち時間なしで中に入ることができるが、すぐ出口であるため見学時間は3分。

▼第4位 キルギス共和国(吉楽吉斯共和国)

キルギスは、中国と国境を接する中央アジアにある旧ソビエト連邦の共和国で、かつてはキルギスタンと呼ばれた。主な産業は絨毯などの織物。バングラデシュと同じく待ち時間なしで中に入ることができるためパスポートのスタンプ集めの方にはお勧めスポットと言える。見学時間は3分。

▼第5位 モンゴル国(蒙古国)

モンゴル国は、中国の北、ロシアの南に位置する、東アジアの国家。首都はウランバートル。モンゴル民族の居住地域であるモンゴル高原のうち、清国支配下において中国語で外蒙古と呼ばれたゴビ砂漠以北の領域を国土とする。これに対し、南部の一帯が内蒙古で、現在は中国領となっている(内モンゴル自治区)。畜産が主産業であるが金や銅、石炭などの資源にも恵まれている。パビリオン内にはゲル(パオ)が再現され彼らの伝統的な生活ぶりを伺い知ることができる。見学時間は10分。



中国国家館を見ることが出来た(これは奇跡だ)

中国旅行社の友人から私の携帯に電話があった。「吉川さん、中国国家館の予約券を手に入れたので午後2時30分にパビリオン前に来て下さい」、並ぶことが嫌いな私は当初から人気パビリオンへの入館は諦めていた。それが予約券さえ手に入れることが困難な中国国家館への入館が可能になったのだ。Aゾーン内のレストランで遅めの昼食を済ませ、早速待ち合わせ場所へ。既に彼は私を待っていた。彼からを「入館予約券」を受け取り、長蛇の列を尻目に、パビリオンすぐ下のエレベータ・ゲートまで並ばずに入場することが出来た。不人気パビリオンしか取材出来ないと諦めていた私にとってはこの上もない朗報だ。これで特集記事に花を添えることが出来る。

中国国家館の建物のデザインは中国古代木造建築の「東方の冠」をモチーフとしている。高さは49mで万博パビリオンの中で最も高い。パビリオンを支える4本の柱にそれぞれエレベータが4基設置されている(計16基、)、このエレベータで最上階へと進むわけだが、なぜだか稼働しているのはその内の4基だけ、あくまでも推測だが、エレベータを全て稼働させるとパビリオン内の収容人数を超えるのではないだろうか?さらに待つこと1時間30分、ようやくエレベータに乗ることが出来た。

高速エレベータで最上階へと向かう。到着地点は電車のホームのようになっている。「春の故事」の映像を眺め待つこと30分、やがてホームの扉が開き中へ入る。全面マルチ画面のスクリーンに中国の発展とともに生きた一人の女性の半生が映し出され、椅子に座りながら中国の30年の出来ごとに想いを寄せる。次は中国5千年の歴史に触れる体験ゾーン、長さ130mのスクリーン映し出される歴史絵巻は圧巻だ。その当時の人物やラクダが歴史絵巻の中で歩きそして動く。これはまさに未体験ゾーンだ。次にレールの車にのって現代へと逆戻り、そして未来都市の有り方を提言すると言った内容だ。見学時間約1時間、中国のエッセンスを凝縮した見応えのあるパビリオンである。(※万博終了後も万博のシンボリック的存在として残す予定だという)


互いを思いやるそんな国になって欲しい。

約8時間という短い取材時間だったにも関わらず中国国家館を観ることができたことは実にラッキーなことであった。発展途上国で開催された万国としては約160年の国際博覧会の歴史において初めてであると上海での開催意義を高く評価するが、国民総生産(GDP)でアメリカを抜いて第1位となった中国が発展途上国であるとは言い難く、むしろこれからの国際社会で中国が果たすべき役割と責任を内外に知らしめたと同時に現在の中国の抱える問題を露呈した万博であったのではないだろうか。たとえば、「より良い都市、より良い生活」をテーマとして掲げた万博であったはずが、会場内には緑や水といった自然に触れ合う空間がなく、ひたすら暑さとの戦いとなった。また、会場内をスムーズに往来できる階上通路を利用する者はほとんどいない。さらにテーマを演出する華やかさが乏しく全体的に閑散とした風景であった。


各パビリオンを繋ぐシャトルバスはクラクションを鳴らし、歩行者は相変わらず信号を守らない。残念なことだが日常の中国社会の光景を万博会場でも眼にすることになる。私たちが手にする会場パンフレットは全て漢字表記であるため、パンフレットからパビリオン国を特定することは至難の業である。欧米人を眼にすることはなかったことから、英語併記のパンフレットは必要なしと判断したのかも知れないが、もう少し来場者に対して細かい配慮があっても良かったのではないだろうか。帰り際に万博オフシャルショップで公式マスコットの海宝を1個20元(280円)で買った。海宝の箱には「2010年上海万博」と印刷されていたが、海宝本体には表示がなく海宝かどうかさえも分からない。上海市内で「2010年上海万博」と印刷された海宝が2個10元で売られていた。一体どっちが本物なのだろう?上海万博のテーマ「より良い都市、より良い生活」の実現のために私達が果たすべき役割について今一度見つめ直す機会を与えてくれた上海万博、その意義は計りきれない程大きい。


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